このような質問を頂きました。なるほど、普段は意識したことはないですが、確かにそれはあります。まず、「アキラの…」かんむりの謎について探ってみましょう。対象曲はコロムビア時代のもののみを対象とします。

この質問は「哀愁のロンバケおやじさん」及び「アキラ★ザ★グレート」のラジニ・タイラーさんから頂きました。


最初のアキラ節 ダンチョネ節 SA-348
1960.3.1発売



 
■「アキラ節」誕生秘話から

アキラのデビュー以来、コロムビアのプロデューサー馬淵玄三氏は、ことあるごとにアキラに付いて彼の歌の魅力を引き出すために苦労していた。「ダイナマイトが百五十屯」の予想以上のヒットで、「マイトガイ・アキラ」の名前が付いたもののアキラが持つ哀調は大切にしたいと思っていた。そうした中でアキラの提案により生まれたのが「ひとりぼっちの歌」だ(「俺は挑戦する」主題歌)。ヒットには恵まれなかったものの後の路線のポイントとなった。そして「十字路」という恋の歌も生まれた。しかし、まだ何かが足りない。ちょうど、映画の方でもアキラは転換期にあった。「南国土佐を後にして」がヒットし、次の企画として日本全国各地の土地を巡るキャラクターという設定となった。そこで全国の民謡めぐりをすればヒットが出るのではと馬淵氏は考えた。「ギターを持った渡り鳥」がヒットした時期でもあった。ほぼ同時に録音された「ダンチョネ節」(「海から来た流れ者」主題歌)「ズンドコ節」(「南海の狼火」挿入歌だが、その前にラジオなどで流れていた)が若者の支持を受けて大ヒットした。こうしてアキラ節が誕生した。
 

この段階では「アキラの…」は付かない。


  ■「アキラのズンドコ節」アルバム発売

小林旭 歌のアルバム」「マイトガイ大いに歌う*」「マイトガイとびあるく」に続くアルバムと想定される(*注:「小林旭読本」には記録なし「アキラのズンドコ節」もない)。本アルバムのタイトルで初めて「アキラのズンドコ節」とアルバムタイトルが付いているが、収録されている曲名には全て「アキラの…」が付かない。しかし、ここで疑問が生じる。「小林旭読本」の記録によると、「アキラの… 」が付けられた最初のシングル盤は「アキラの会津磐梯山」と「アキラのツーレロ節」(1960.7.2発売)である。後に発売されたアルバムには「アキラの… 」が付かない。これは企画段階では「アキラ… 」が付かず、先行発売されたシングル盤のみに、かんむりがついたものと思われる。つまり、この段階からは「アキラの… 」が付けられるようになったものと考えられる。アルバムは企画段階で既にジャケットデザイン等が決まっていたものと思われる。先行シングルには、かんむりが付き、アルバムには付かないという面白い現象を見ることができる(下図参照)。
 

この段階でも「アキラの…」はアルバムタイトル以外は付かない。




アキラのズンドコ節
1960.9月(?) 発売
AL-260
4枚目のアルバム(?)

■「アキラのズンドコ節」収録曲

 ズンドコ節、ツーレロ節、会津磐梯山
 には後に「アキラの…」がかんむりされる。
 但し、ズンドコ節は既にヒット曲だったので
 かんむりされるのはずっと後のこと。

 
  ■1960年のレコーディング曲

3月 おけさ数え歌

   やくざの詩(うた)

   ダンチョネ節

   炭坑もぐら

6月 ズンドコ節

   鹿児島おはら節

7月 ツーレロ節

   会津磐梯山  

9月 ノーチヨサン節
  

   東京かっぽれ

10月  さすらい

    チョンコ節

    ホイホイ節

11月  炭坑節

    おてもやん

    ソーラン節

12月  デカンショ節

    カラクリ

    北海盆唄

    ブンガワンソロ



コロムビア アキラ1 2002年2月21日発売より

「アキラ1」には、「アキラの…」で固定された曲名が数多く並んでいます。これらは全てシングル盤のタイトルに基づいたものです。つまり、上記の1960年当時の企画段階におけるタイトルと比較して下さい。

左の内、上記以外の「アキラの」が付く曲は1961年以降のもので、「アキラの」と付くことがあたりまえになったものです。

   

 
  ■「ダンチョネ節」の違い

「ダンチョネ節」には、2バージョンがあるようです。ここでいうそれは、あくまでもコロムビア盤を対象としています。ご質問があったのは、右のアルバムです(スミマセン、ちょっと拝借しました)。右の2枚のアルバムに収録されている「ダンチョネ節」に違いがあるということです。違いのポイントを以下にまとめました。

演奏時間が短い
 
右上のCOCA−10332 は3番まで歌われている
 原盤は上図のシングル番SA−348
 
右下のCOCA−14564〜66は2番の歌詞がなく時間が短い。

アレンジが違う
 
上のCOCA−10332 はオリジナルと思われる。
  但し、「アキラのダンチョネ節」の表記。
  しかし、音源表記はSA−348です。
 
下の COCA−14564〜66は、マンボ風ではない。
 特にあるはずの間奏での「ウゥッ」がない。



1989年発売
小林旭 さすらい CA-3357

このCDに収録されている「ダンチョネ節」が
右の上の内容と同様のものと考えられる。




マイトガイ
小林 旭全曲集
発売日:1992年10月21日
COCA−10332



歌手デビュー40周年記念
オリジナル・ベスト55
発売日:1997年10月21日
COCA−14564〜66


  結果は明らかに2バージョンが存在するものである。しかし、それがいつ頃録音されたものかを探ることは難しい。あくまでも仮説ではありますが、1962.11.5発売の「永遠に幸あれ 小林旭〜ひばりと旭のゴールデンカップル〜」に収録されている曲からかも知れない。これはあくまでも片面が新録音という記録があるための想像です。真実は、これらのアルバムをお持ちの方からの情報待ちとなります。このあたりの情報をお待ちしております。

<追記 11月5日>
新たな情報を頂きました。
「小林旭の花のステージ」(ALS−4051)1964年9月発売 
 ズンドコ節/ギターを持った渡り鳥/十字路/さすらい/ダンチョネ節/女を忘れろ/黒い傷痕のブルース/ダイナマイトが150屯以上がステレオで再録音。これらの楽曲は後の1968年発売の「マイトガイ・ゴールデンヒット」にも収録されています。(以上は、ねこやさんの情報) また、ちゃんゆうさんからも「『ダンチョネ節』はステレオで録音しなおされたもの」と頂きました。

<追記 11月6日>
やはり、「
オリジナル・ベスト55 」に収録されている「ダンチョネ節」はモノラル表記とのことです。
そして、哀愁のロンバケおやじさんより「ダンチョネ節」はサウンドトラックを含めて3バージョンとのご指摘がありました。このあたりは以下の関連ページを参照して下さい。歌詞が変わっているのがポイントです。


 以上、参考文献(「小林旭読本」小林信彦+大瀧詠一監修 キネマ旬報社/「明星」1961年新年増刊号)


関連おすすめページ >>> 
「ズンドコ、ダンチョネのあの頃」 「それは、ダンチョネ節からはじまった」
 

 

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