日活アクションの第一人者ともい
うべき渡辺武信先生は、類型作品
に「渡り鳥の兄弟たち」という表
現をされています。
放浪型ヒーローとして『波止場の
無法者』『高原児』『大森林に向
かって立つ』『さすらい』『惜別
の歌』『地獄の夜は真紅だぜ』の
6本をあげられています。
しかし、私は別の見方をします。
『高原児』の主人公は現場監督と
いう職業を持っている。それに好
きな人(浅丘ルリ子)の窮状を救
うために旅立ったものであり、放
浪ではない。また、現場に戻る
(郷エイ治も後に合流することを
匂わせている)。
私が思う類型作品とは以下のもの。
《流れ者姉妹編》
太陽、海を染めるとき
高原児
大森林に向かって立つ
この3作品に共通するのは、海と
山 の違いはあるものの善良な人々
の職場、あるいは家庭が脅かされ
そうになった状況の中で主人公が
敢然と、その妨害に立ち向かうス
タイルであり、海の男達、山の工
事現場、牧場で働く男たちの中に
とけ込もうとする主人公の姿が共
通している。
特に『高原児』は個人的に好きな
作 品でもあり、最も「渡り鳥・流
れ者 シリーズ」に近いものと考え
ます。 特にラストシーンのヒロイ
ン(浅丘 ルリ子)との別れを惜し
むシーンで は、二人の歌(「宇目
の唄げんか」) にかぶるように主
題歌(「夕焼けは赤い幌馬車」)
が流れます。また、ライバル役の
殺し屋(郷エイ治)も全身黒づく
めのカウボーイスタイルで、まる
で「シェーン」のジャック・パラ
ンスのような象徴的なコスチュー
ムで登場。
《航空もの》
都会の空の用心棒
太平洋のかつぎ屋
都会の空の非常線
嵐を突っ切るジェット機
『太平洋のかつぎ屋』は事故が元
で大手の航空会社を追われ、吹き
溜まりともいうべき、はみ出し者
のパイロットたちが集まる小さな
航空運輸会社に身をよせる主人公。
『都会の空の用心棒』では、空か
らのビラ巻き(現在は禁止されて
いるが、かつては可能であった)
や山岳救助を主にした小さな航空
会社である。その他も決して大き
な組織には属さない主人公。
弱者の中に身を置き活躍するヒー
ロー像が共通している。
特に『都会の空の用心棒』では得
意の体技を活かしたヘリコプター
にとびついてぶら下がったままの
アクションは特筆もの。
《サーカスもの》
さすらい
地獄の夜は真紅だぜ
2作品はサーカスの世界という共
通点があり、相手役(松原智恵子)
と監督が同じ(野口博 志)である
こと。
両作品ともサーカス団内部の話で
あり「渡り鳥・流れ者」のような
孤独な放浪感はない。アキラさん
の体技を活かしたアクションがポ
イントとなる以外は特にないので
は?
企画段階と公開時では映画のタイ
トルが変わる場合が多いもの。
『さすらい』のタイトルも企画段
階では「大空を裂く男」だったら
しい。これは《日活映画》の昭和
37年1月号の記事に掲載されてい
る。
《日活映画》より引用
アキラの人気は映画だけのものでは
ない。歌手としても、今やNO.1の売
れっ子であることはご存知の通り。
ところが、その彼が、ぞくぞくと彼
自身の歌を映画化するゴキゲンの企
画がきまった。まず12月に「黒い傷
痕のブルース」そしてお正月が「北
帰行」を映画化する「渡り鳥北へ帰
る」二月には「さすらい」を主題と
する「大空を裂く男」。どれをとっ
ても素晴らしい映画ばかりである。
“渡り鳥シリーズ”も第八弾。その
第一作「ギターを持った渡り鳥」の
ロケ地函館に戻って、ひさびさに斉
藤武市監督、浅丘ルリ子共演の最高
トリオが顔を合わせる。共演は郷エ
イ治、白木マリ、青山恭二、深江章
喜の面々。
[ストーリーについて]
これらの作品の中では、
「太陽、海を染めるとき」
「高原児」
「大森林に向かって立つ」
「さすらい」
・・・・のビデオがあります。
それを見るまで、お時間を下さい。
*9/17 市村さんより指摘を受け、
一部訂正いたしました。感謝!