★はじめに

  本小説は、実際の映画とは、やや異なり
  ます。特にセリフについては別の表現と
  なっています。


 本作品は徹底的にウエスタンを意識した
 ものです。他のコーナーもご覧いただい
 て、作品の背景や制作エピソードをお読
 みいただくことをお勧めします。

 
 脚 本:山崎 巌 原作:原 健三郎

 監 督:斉藤 武市
 

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  NCは、この限りではありません。

 

 母を慕う少年信夫

 広大な原野をのんびりと一頭の馬が行く。馬上にはフリンジがついた
 皮のジャンパーを着てギターを持った精悍な青年と、幼い子供が乗っ
 ている。遙かな山並みの向こうには釧路の街が拡がっていた。

 渡り鳥の伸次は幼い信夫を伴い、遙かなこの北の街に母親を探しに来
 たのだ。
 「そこには、ぼくのかあさんがいるんだね」子供が渡り鳥の伸次に、
 たずねた。
 「ああ、きっとな」そう答えた伸次にも確証はなかった。
 渡り鳥にはあてもない旅だった。ただ、死んだ信夫の父に、
 「別れた女房が北海道の釧路にいるはずだ・・・」
 それだけを聞いて、はるばる海を渡ってきたのだ。
 美幌峠の展望台にさしかかった時、一人の男がうまそうに水筒を口に
 していた。一癖ありそうな風来坊だった。
 それをみた信夫は・・・
 「おにいちゃん、のどが乾いた」
 それを聞いた男は伸次に水筒を放って投げた。
 それにはウイスキーが入っていた。
 伸次は信夫に我慢をするように告げて、男をなじると、
 「そっちの道を行くのは、やめな」と男が遮った。
 「どうしてだい」と伸次が訊くと、
 「お前のツラを見りゃわかる。きっとロクなこたぁ起こらねえぜ」
 「他人の指図はうけねぇ」
 振り切って馬を進めた硫黄山の麓で、その“ロクなこと”に遭って
 しまった。
 鉱石を積んだトラックが、ならず者たちに囲まれて立ち往生してい
 たのだ。伸次は群がる男達を得意の銃で追い払った。
 
 伸次と信夫が乗った馬はアイヌ部落に入り、集落の真ん中にある井戸
 の前で立ち止まった。
 「さあ、たっぷり飲みな」
 伸次は信夫のために桶に水を汲んだ。
 その瞬間、どこからともなく矢が飛んできて、アイヌの若者達が二人
 をとりかこんだ。
 「何しにきた」
 猟銃を構えたアイヌの若く美しい娘が伸次をなじるように言った。
 「ほう、ここじゃ水を飲むだけで、銃に狙われるのかい」
 伸次は信夫少年をかばうようにして言った。
 「とぼけるな!あんた、高堂の仲間だね」
 「高堂?知らないね」
 「ふん、だまされるもんか!二度と来られないようにしてやる」
 アイヌ娘が持つ銃の引き金に指がかかった。
 すると、部落の小屋の中から美しい娘が飛び出した。
 「待ってちょうだい」
 アイヌ娘と伸次の間に割って入った。
 「ほっといて、お嬢さん。この人何かを探りにきたんだ」
 「勘違いよ、第一、坊やを連れてるでしょ」
 この美しい女性は、このアイヌ部落にはふさわしくない洗練された
 都会的な雰囲気がする女性だった。
 アイヌ娘は、伸次たち二人を射るように見て、
 「こっちへおいで!」
 むきになって二人を小屋に入るように促した。
 小屋の中では老婆が祭壇の前で一心不乱に手を合わせていた。
 「お婆ちゃんにうらなってほしいんだよ」
 アイヌ娘がいうと、老婆は振り返って伸次を見ながら
 「この人とセトナのことかい」
 「ちがうわよ、この人が悪い人ではないかどうかだよ」
 娘の名はセトナというらしい。
 老婆は祭壇に向き直り、大きな水晶玉を前に呪文を唱えた。
 「この人の心は澄んでいる。あんたは、女を探しているね」
 伸次の顔を見ながら老婆が告げた。
 「すぐに見つかるよ、南の方角でね」
 伸次がセトナを見ると、彼女はうなずいた。
 「ありがとう、お婆さん」
 セトナが礼を言って、みんなを促して出ようとすると
 「お待ち……」
 老婆は伸次を見つめて
 「北へ行くがいい」
 「冗談じゃねぇ、全く正反対じゃあねえか」
 伸次が怒ったようにいうと
 「南へ行くとお前さんの命が危ない。それに、誰かに悲しみと
 大きい不幸を与えることになるよ」
 
 だが、伸次に対する疑いは晴れたようだ。
 「ほんとうに済みません、この人たち、いつも悪い人達にいじめ
 られているもんですから」
 洗練された美しい娘が謝った。
 「あんたも、この部落の人かい?」
 伸次は訊ねた。
 「なぜ?」
 「この人達の仲間にしちゃアカぬけてるし…それにしちゃ、皆が
 よくなついているからさ」
 「お嬢さんは、あたしたちのことを調べているのさ」
 セトナが笑いながら言った。
 「清里順子さんっていえば、この土地じゃ有名な民芸の研究家だよ」

  右上へ

 

 
 

 

 

 
  
左下から
 悪玉ボス・高堂の計画

釧路の夜
キャバレー「
ブラック・ベア」のフロアに荒々しくセトナの身体が
投げ出された。
「ただ今よりアイヌの熊踊りをお目にかけまあす」
ならず者のロク、サブ、ヤス……硫黄山の麓で馬車を襲った連中だ。

清里順子が市内に経営する「あかつき民芸店」を訪れたセトナを、
無理矢理さらってきたのだ。
「やめて!帰してよ!」立ち上がって、逃げようとするセトナを
ロクがこづきまわす。
すると、いきなりロクの襟首が背後からグイと掴まれて
「メノコは見飽きた。今度はおめえたちのアトラクションだ」
カウンターの隅から立ち上がった男は、伸次が美幌峠で 出会った
風来坊だった。
「な、何をしやがる」と
サブやヤスが刃向かうのを、男は押しとどめて、
手にしたオートマチックの銃を連中の目の前にさらした。
「俺を誰だと思っているんだ。網走帰りハートの政といやあ、
ちったあ知られた、おあにいさんよ」
そのスキに、セトナはホールから逃げ出した。
入れ違いに、ギターを弾きながら現れた伸次は得意のノドで、
「ソーラン節」を唄った。
歌い終わって、騒ぎを聞いてカウンターに出てきた支配人の倉井に
伸次が訊ねた。
「この店に、和枝というマダムがいると聞いてきたんだが…」
「どういうご用件でしょうか」
「飲みに来る客に理由はねぇよ」
「ただ今、旅行中でございますが」
「ほう、どこへ」
「存じません、二三日で戻ると聞いております」
それを横から、ハートの政が
「ボスは、どこだい?」
「はっ?」
「高堂さんだよ。いっとくが、俺には会わなきゃならねえ用がある。
マダムと一緒かい?」
伸次の目が光った。
政が訊ねる高堂は、この街のボスだった。
倉井もロクもサブも、みんな彼の乾分だ。
伸次が訊ねる和枝は、彼の情婦だったのだ。
空港では、倉井とハートの政がセスナ機から降りてくる高堂を待ち
受けていた。
和枝を伴い降りてきた高堂は、ハートの政の顔を見て
「出てきたのかい」
「あぁ、一週間前になぁ。約束の300万は忘れちゃいねえぜ」
それを聞いて、高堂は渋い顔をしながら
「それより、私のところで働いてみないかい?」
「用心棒なんてえのはアキアキしてらあ」
「なあに、私の片腕だよ」
高堂と政、それに倉井を乗せたセスナ機が大きく旋回する。
眼下には緑の山並みと、雄大な原生林、そして…深い神秘を
たたえた湖である。
「この付近に、東京からの直行便が着けるような飛行場を作
る予定だ」と高堂が言った。
「これからは観光の時代だ。ここで降りた観光客を待機して
いるヘリで、あちこちの観光地に運ぶんだ……そうなれば、
観光客は今の五倍以上になる」
「いうことがでけえじゃねえか」
ハートの政が口をはさんだ。
「資本を出す奴はいくらでもいるさ、飛行場建設の許可が下
りればな」
「場所があるのかい」
「……ある」
高堂が指さしたのは、湖畔のアイヌ部落だった。

 スペードのエース

「飛行場? あの部落をかい?」
伸次が言った。

「ええ」
弱々しく、清里順子がうなずいた。
アイヌ部落に近いポプラ並木の林で向き合った二人だった。
高堂一味の部落へのいやがらせはあいかわらず続いていた。
今日も、ロクたちの嫌がらせを伸次が追い払った後の
二人の静かな時間だった。
「君たちだけが苦しむことはない。警察へ行けばいいじゃないか」
「嫌がらせだけじゃ相談にのってくれないわ。それにあの土地は
伯父の持ち物なの」
順子はみなしごだった。
ずっと伯父清里大造の世話になっていた。
大造は硫黄山の一角に小さな硫黄の精錬所を経営している。
大造の息子茂は、順子の許嫁だった。
「伯父さんは、一年前に東京から来た高堂という人に何も知らず
にお金を借りたんです…あの土地を担保に」
「返せないんだな」
「まだ期間はありますわ……でも返されると、あの人達が困るんです。
だからお金ができないように色々と妨害をするんです」
大造は、アイヌの人たちを心から愛していた。だからこそ、
なんとしても高堂たちに土地を渡すまいと心を砕いているのだ。
 
 つづきは、しばらくお待ち下さい。

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