賭博師(ギャンブラー) シリーズは全部で8作といわれている。渡り鳥シリーズも8作である。これは偶然の一致だろうか? 前者は『さすらいの賭博師』を最初の作品として、渡り鳥・流れ者のムードを引き継いだ『さすらいは俺の運命』までと、『黒い賭博師』から始まる三作は別物とされる。また、これらのシリーズを先駆ける作品として『波止場の賭博師』(1963)がある。これを渡り鳥シリーズになぞらえてみると、『南国土佐を後にして』がシリーズを先駆ける作品としてあり、『ギターを持った渡り鳥』から、シリーズ最高傑作といわれる『大草原の渡り鳥』までを、アキラ&ジョーのテンポのよい軽妙なやりとりから醸し出される独特のムードがあった。『波濤を越える渡り鳥』はジョーがアキラの兄だった設定から、それまでのムードは薄れていた。その後は、シリーズでのコンビは見られなくなった。賭博師シリーズは逆に後半の『黒い賭博師』以降から新たな輝きを見せることとなった。さすらい人よりも、賭博師としてのキャラクターを強調したことによる成功と思われる。折しも世間ではスパイ映画ブームでもあった。
それらは、さておき…… <資料参照:賭博師シリーズ

ここではシリーズ中、地味ではあるが、後の飛躍への大きな一歩となった『黒いダイスが俺を呼ぶ』をとりあげる。この作品の撮影前は、小林旭さんの人生にとって大きな転機の時期でもあった(美空ひばりさんとの離婚)。また、作品的にも黒白作品が多く続いた時期でもある(本作品も黒白…もしかすると、このあたりからタイトルが?)。
では、本作品の監督である井田探氏がアキラさんのことについて語られた文章を紹介しましょう。 1964年10月30日封切-黒いダイスが俺を呼ぶ

 


井田 探監督におききして……

●アキラ君の離婚後初の作品は、『さすらいの賭博師(ギャンブラー)』であった。むかしの“渡り鳥”のムードを持つ作品だったが、非常に受けた。大ヒットまでは行かないが、小ヒットといったところであろう。ファンレターなどを見ても、ファンがアキラ君の渡り鳥ムードをいかに愛しているかがよくわかった。

●いま撮っている『黒いダイスが俺を呼ぶ』も“さすらいもの”“渡り鳥”ものと内容が似ており、これにさらにアクションとダイスの使い方の魅力を加味することになろう。

●また、アクションにしても、彼は裕ちゃんや宍戸君ともちがう。アキラ君のアクションは全身で動くところに特長があろう。それも非常にスピーディーな動きだ。このような俳優はちょっと例がみあたらない。一対一のアクションよりも、多くの敵にかこまれた時のアクションを多くしたが、それもアキラ君の魅力を活かすことになるであろう。スピーディーな動きの中で、右に左に、前に後ろに敵が倒れるわけで、アクションとしてのヤマ場ももちろん見所のひとつになるはずだ。

●高橋英樹君との初の共演作『俺たちの血が許さない』のロケが、先日、軽井沢で行われたが…。その時、アキラ君が高い崖から飛び降りるシーンがあった。相当な高度である。ふつうだったら、このような場合、ふきかえを使うのであるが、アキラ君はどうしても自分でやる、と言いきるのだ。そして、ひざの肉をえぐってしまったが、これからはあまり無理をしないように望みたい。

●いまの作品に入る前から、彼はボディビルを始めている。彼は相当に良いからだをしているが、もっと胸幅を広げたい、そして本格的に身体を鍛える。これは非常にいいことだ。他の映画各社を見渡しても、彼ほどのアクションスタアはちょっと見あたらないのではなかろうか。僕が演出する時も、彼にはほとんど注文をつけることがない。彼のやりたいようにやらせている。彼は立派にやってのけるのである。従って僕の気に入ったスタアの一人である。

●アキラ君の作品としては、“次郎長”ものを撮っているが、アキラ君のものが七、八本で、いちばん多いと云えよう(注:4本)。アキラ君の場合、僕の考え通りにはやらない。その場の雰囲気によって変えてゆく。もちろん、アキラ君の意見も充分にとり入れるのだが、彼の意見はツボを得ていて、なるほど、といわせるものを持っている。

● “さすらいシリーズ”(注:賭博師シリーズ)を大きく伸ばしたい。アキラ君もいま非常にファイトを燃やしており、必ずやこのシリーズは大きく伸びるであろう。つまり、第二の渡り鳥ということになる。また、彼は将来、アクション物で芸術祭に参加したいとう意欲を持っているが…。これもまた、非常に良い考えである。人間に厚みと深さをつけようとして、いま、彼は身体を鍛えるとともに、一心になって読書をしている。芸術祭に参加できるようなアクションものの構想を、彼みずから作り上げるのではないか。だが、それは将来のことである(注:後の『春来る鬼』のことか)いまの彼は、若い人たちのイメージをこわさない作品を作るべきだ。

別冊近代映画12月号 昭和39年より抜粋

 

 
企画 ................  児井英生
監督 ................  井田探
助監督 ................  手銭弘喜
脚本 ................  山崎巌 井田探
原作 ................  野村敏雄
撮影 ................  萩原泉
音楽 ................  大森盛太郎

氷室浩次…………小林旭
城崎周一…………和田浩治
堀茂子……………西尾三枝子
木原牧子…………笹森礼子
神戸刑事…………井上昭文
リエ………………上月佐知子
かね………………奈良岡朋子


海沿いの新興都市、宇山市にふらりと現れた、さすらいの賭博師・氷室浩次は、川のほとりで釣りをするこの街の駐在である佐野に会った。おりしも地元の暴力団依田組が善人をいかさま賭博で食い物にしている。佐野の紹介で城崎医院に下宿することになるが、城崎医師の息子周一は3年前から行方不明だった。幼い頃に病気で兄を亡くした、お手伝いの堀茂子は氷室に兄の面影を見て淡い憧れを抱いた。

行方不明であった息子の周一が突然現れたのには訳があった。東京の暴力団榊原組でツボを振っていた周一がお払い箱になり、故郷に戻って来たのだ。やがて周一は地元暴力団の依田組に雇われるが、それは榊原組が依田組の縄張りをねらっての策略だった。氷室は両者の抗争に巻き込まれながら周一を助けようとするが、頑なに氷室を嫌う周一。周一は、3年前に共に将来を誓い合ったはずの木原牧子を訪ねるが、牧子の気持ちは変わっていた。牧子はむしろ、影のある氷室に惹かれ始めていた。周一を利用しようとする両暴力団。ダイスは、2度と手にしないと誓った氷室だが、周一を助けるために、あえて勝負に挑む。やがて、両暴力団の抗争はエスカレートし、氷室をかばおうとして、茂子が悪の銃弾に倒れる。氷室の心に、かつて恋人を死なせた思いが蘇る。氷室の手にした正義の銃口が火を噴く。

騒ぎも治まり、駐在の佐野の前に逮捕してくれとばかりに手を出す氷室。佐野は「わしは知らん」と、とぼけたフリをする。氷室の目頭に熱いものがこみ上げてきた。黙って街を出る氷室。その後を追う牧子。それを引き留める佐野、「頼む!あの男を、そっとしておいてやってくれんか」牧子の目には大粒の涙があふれていた。海の彼方には、ゆっくりと船影が動いている。

 

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