井田 探監督におききして……
●アキラ君の離婚後初の作品は、『さすらいの賭博師(ギャンブラー)』であった。むかしの“渡り鳥”のムードを持つ作品だったが、非常に受けた。大ヒットまでは行かないが、小ヒットといったところであろう。ファンレターなどを見ても、ファンがアキラ君の渡り鳥ムードをいかに愛しているかがよくわかった。
●いま撮っている『黒いダイスが俺を呼ぶ』も“さすらいもの”“渡り鳥”ものと内容が似ており、これにさらにアクションとダイスの使い方の魅力を加味することになろう。
●また、アクションにしても、彼は裕ちゃんや宍戸君ともちがう。アキラ君のアクションは全身で動くところに特長があろう。それも非常にスピーディーな動きだ。このような俳優はちょっと例がみあたらない。一対一のアクションよりも、多くの敵にかこまれた時のアクションを多くしたが、それもアキラ君の魅力を活かすことになるであろう。スピーディーな動きの中で、右に左に、前に後ろに敵が倒れるわけで、アクションとしてのヤマ場ももちろん見所のひとつになるはずだ。
●高橋英樹君との初の共演作『俺たちの血が許さない』のロケが、先日、軽井沢で行われたが…。その時、アキラ君が高い崖から飛び降りるシーンがあった。相当な高度である。ふつうだったら、このような場合、ふきかえを使うのであるが、アキラ君はどうしても自分でやる、と言いきるのだ。そして、ひざの肉をえぐってしまったが、これからはあまり無理をしないように望みたい。
●いまの作品に入る前から、彼はボディビルを始めている。彼は相当に良いからだをしているが、もっと胸幅を広げたい、そして本格的に身体を鍛える。これは非常にいいことだ。他の映画各社を見渡しても、彼ほどのアクションスタアはちょっと見あたらないのではなかろうか。僕が演出する時も、彼にはほとんど注文をつけることがない。彼のやりたいようにやらせている。彼は立派にやってのけるのである。従って僕の気に入ったスタアの一人である。
●アキラ君の作品としては、“次郎長”ものを撮っているが、アキラ君のものが七、八本で、いちばん多いと云えよう(注:4本)。アキラ君の場合、僕の考え通りにはやらない。その場の雰囲気によって変えてゆく。もちろん、アキラ君の意見も充分にとり入れるのだが、彼の意見はツボを得ていて、なるほど、といわせるものを持っている。
● “さすらいシリーズ”(注:賭博師シリーズ)を大きく伸ばしたい。アキラ君もいま非常にファイトを燃やしており、必ずやこのシリーズは大きく伸びるであろう。つまり、第二の渡り鳥ということになる。また、彼は将来、アクション物で芸術祭に参加したいとう意欲を持っているが…。これもまた、非常に良い考えである。人間に厚みと深さをつけようとして、いま、彼は身体を鍛えるとともに、一心になって読書をしている。芸術祭に参加できるようなアクションものの構想を、彼みずから作り上げるのではないか。だが、それは将来のことである(注:後の『春来る鬼』のことか)いまの彼は、若い人たちのイメージをこわさない作品を作るべきだ。
別冊近代映画12月号 昭和39年より抜粋