●流れ者「野村浩次」のスタイル
真っ赤なセーターに白いパンツ(スラックス)、そして薄いグレーのハーフコートスタイル。このハーフコートの左胸にエンブレム。このエンブレムのデザインに遊びがあり、デザイン文字は"MITE
GUY" とある。これは知らない人が多いでしょう。(笑)
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●船上ロケは神戸から始まった
ロケ隊一行を乗せた関西汽船「むらさき丸」は神戸を出発して、松山高浜港を目指した。この船上からロケが始まった。
関西の実業家・太田黒(故・藤村有弘氏/以下敬称略)の財布をすりとろうとしたその瞬間、十字架の政(宍戸錠)の腕を掴んだのは浩次だ。「俺の邪魔をしよってのか」と銃をかまえてすごむ政。このあたりのシーンが船上で撮影された。乗り合わせたお客さんたちは大喜びだった。
●高浜港に到着、そして
午後5時、真っ赤な夕陽が舷側を照らし、長い船影が港で待つ多くのファンの上にかかった。一行は直ぐさま道後温泉に直行。そこで待っていたのはファンにもみくちゃにされた浅丘ルリ子さん。一足先に飛行機で松山に到着。「するてえと、流れ者と殺し屋は船で、我らが女神は飛行機というわけですね。大分差がついたぜ兄弟!」と、おどける錠さん。
●翌日は、松山の城下町ロケから再び高浜港
翌朝早くから城下町を歩くルリ子さんの姿を撮影。多くのファンがかけつけ大騒ぎ。
続いて高浜港でのロケは、太田黒をルリ子さんが迎えるシーンの撮影。
「ええ錠さんよ、あの藤村有弘のスタイル、いやらしいわ」と控えで待つ旭さんが錠さんに言った。そのスタイルは、金縁眼鏡にひげをつけてニヤニヤ笑った姿。思わずルリ子さんも吹き出した。「バンサって老けたほうが魅力よ」とはルリ子さん。
●ラストシーンの撮影は大騒ぎ
汽車に乗り街を出てゆく浩次を見送る殺し屋と踊り子のローズ奈美(白木マリ)、バーのマダム蘭子(南風洋子)の3人。松山駅で本物の列車(通常ダイヤ)を使っての撮影なのでミスは許されない。しかし、ファンの多さにしばしば中断。ロケを見たさに乗客が一斉に列車の窓を開けてNGの続出。旭さんは、そのまま列車に乗り、次の駅で折り返し戻ってくるという騒ぎ。車内でもファンからのプレゼント攻撃に嬉しい悲鳴。
●撮影3日目・海岸線ロケ
瀬戸内海沿いの北条という静かな海岸線道路での撮影。このシーンは石油運搬トラックに爆弾が仕掛けられたことがわかり、野村浩次がジープで追いかけてトラックを止めるという場面の撮影。トラックにはヒロインのルリ子さんが乗っている。追いついた浩次は素早く玲子(浅丘ルリ子)を助けおろす。海岸線の細い道路なのに、ここにも多くのファンがあふれ、黄色い声援が飛ぶ。「アキラちゃん、頑張って!」これを聞いたルリ子さん「アキラちゃんのことばかり心配してるけど、このシーンは、アキラがあたしを助けに来るのよとご立腹。
●撮影4日目・四国霊場五十一番札所「太山寺」
古い静かな深山の寺でロマンチックなシーンの撮影。玲子が野村浩次に家族の事情をうけあけるシーン。五重の塔や石仏が並ぶこの場所で叙情的なシーンが快調に撮影された。
ところが、この場所がルリ子さんにとって思い出の場所だと聞かされて全員が驚いた。この4年前(昭和31年)に『娘巡礼流れの花』のロケの時にこの寺に立ち寄ったことがあるのだ。「へェ、ールリちゃんが真っ白の巡礼娘で杖を持って、ここを歩いてたの?」とアキラさんもビックリ。山崎徳次郎監督は「ルリちゃんもお色気が出てきて、なかなか美人になった」と一言。
●四国霊場五番札所「岩手寺」
ここではアキラさんと、ジョーさんの決闘シーン。ここでもファンがあふれ返った。ジョーさんのスタイルはブラックスーツにホワイトカラーなのに何故か巡礼笠が頭に、これは四国巡礼にからめたジョーさんのサービス精神でしょう。
そしてこの寺のご住職が「あたしはここに古くから住んでますが、こんなにこの山道に人が出たのは初めてです」とびっくり。更にジョーさんの姿を見て「牧師がピストルを持って歩くなんて面白い映画ですね」という。すると、ジョーさんは、すかさず「なにしろ僧籍を剥奪された生臭坊主ですよ」と返した。
撮影は本堂の中に銃声が響きわたるというもの。通りかかった巡礼のおばさんが、おっかなびっくりでのぞいていた。
●撮影5日目・石油会社での大激戦
太田黒が経営する石油会社に乗り込み、ボスを倒すために大激戦が行われるシーン。ここでも多くのファンが取り囲んで大変な騒ぎ。(実際の石油会社が撮影に使われた=南海石油?)その中で、アキラさんは撮影中に負傷。六連発銃が暴発し右手のひらを焼いてしまった。しかし、気丈なアキラさんは、それを映画の効果に採り入れた。
●撮影6日目・踊りのシーン撮影中止
道後公園に五千人のファンと踊り手の女の子たちが集まった。一角にやぐらが組まれ、紅白の幕が巻かれた。やがて更に人が集まり、松山中の人が一堂に集まったかと思えるほどになった。この状況から、この日は撮影が中止となった。また、小学校の坊やが人並みに押され足を捻挫する事故も起こった。この夜、子供は「痛い痛い」といいつつもアキラさんの名を呼んだ。心配した父親はアキラさんの部屋を訪ねて「一目逢ってっやってくれ」と頼んだ。それを聞いたアキラさんは子供を見舞った。
●撮影7日目・松山音頭(風)の群舞シーン
翌日はさらに人が増えて大騒ぎとなった。大群衆が見守る中をやぐらに昇ったアキラさんが歌う。その周りを踊り手が舞う、御神輿も出る。お約束のお祭りシーンは大成功の内に撮影終了。
(*本編では、アキラさんがやぐらで歌うシーンはありません。カットされたのでしょう)
●ラストシーンの別カット撮影
松山を離れる野村浩次が乗る列車を玲子がトラックで、それを追うカットの撮影。トラックの窓から輝くような笑顔を送るルリ子さん。その後は東京で待つ次の仕事のために空港へと向かった。アキラさん、ジョーさん、バンサの面々は船旅で東京へと向かった。