歌は難しいね と口を揃えて…
- 和田 車はまず、大至急買うとして、歌の調子はどう?
- 赤木 適当に歌ってるよ。
- 和田 こんど、錠さんが唄ったんだって?
- 赤木 そうなんだ、「殺し屋の歌」ってんだよ。
- 小林 うまいだろ?
- 赤木 うん、なかなかやるよ。最初ね、誰かが書いた詩を持って来て錠さんに見せたんだって。そしたら、あまりよくなかったらしいんだ。
- 小林 自分でやっちゃったの?
- 赤木 そうなんだ。自分で詩を作りだしたんだよ。
- 和田 すごいじゃないか。
- 赤木 これがまた、その曲にぴったりなんだよ。
- 小林 レコードにするんだろ?
- 和田 しちゃったんじゃない?
- 赤木 吹き込んだのは早いんだよ十月かな…?
- 小林 市販したんだろう?
- 赤木 それが分からない。とにかく彼が云ってたよ。「殺し屋」って題名がよくないってんで、倫理規定にひっかかるらしいんだ。
- 和田 だってね、家の誰かが云ってたよ。錠さんが歌ってたって、…ラジオで…。
- 小林 あのニヒルな声はしびれるよな…。
- 赤木 俺たちよりずっとうめえよ。
★右上へつづく ↗
- 和田 お二人とも、歌はそうとうやるけど、やっぱり歌ってな、むずかしいよ。
- 赤木 それやそうだ。
- 和田 途中でなに歌ってんだか分からなくなっちゃうんだよ。
- 小林 俺なんかでも、前は苦労しちゃったんだものな…。
- 和田 旭さんはいいよ。
- 赤木 ヒデ坊だって結構やるじゃねえか。
- 小林 うまいよ、うまいよ。
- 和田 (照れて)そんなにひゃかすなよ。
- 赤木 ところで、バンコックに歌は持って行くの?
- 小林 うん、五曲ばかりね。
- 和田 話によるとね。向こうの方は意外と日本の歌が流行ってるらしいよ…。
- 赤木 新聞でみたよ。
- 小林 バンコックの皇帝陛下に食事に招待されることになってるんでね。
- 赤木 じゃ、その席上でいっちょやらかす訳だ。
- 小林 そこでは、故郷ジャパンの代表の歌など…。
- 赤木 君が代?
- 小林 とんでもない。いろんなのがあるじゃない。
- 和田 唄うのがしょうばいじゃないんだからね、…誠意を持って厳粛に。あくまでも日活の俳優であること…。
- 小林 分かった、分かった。