第一の事件


 

 
 ★撮影エピソード★
 
 もの凄い風の吹く、もの凄く寒い夜、怪人せむし男の夜間オープン。
 走っている車にとび移るシーンや車にひきづられる場面のシーン。
 スタントマンがやるはずになっていたこのシーン。

 「オレ、ヤルヨ」「看板俳優にケガでもされたら・・・」と、

 ハラハラするスタッフを尻目に見事に演じきった旭さんにスタッフ一同
 ホッとするやら感心するやら「さすが旭さん」

 藤村大造のロケシーン。学校帰りの小学生。
 「あっ、赤いトラクターのお兄さんだ!」
 「おい、ボク!おじさん誰だか知ってるかい?」
 「藤村大造だい」
 「えっ、どうして知ってるの?」

 「少年マガジン読んでるもん」
 嬉しくなった旭さん。次々に変装の大サービスも、小学生は全問正解。
 ご機嫌な旭さん、ロケも快調に終わりました。

 ★鈴木則文監督談★

 多羅尾伴内シリーズは娯楽映画のルーツとも言える作品だと思う。
 当時の若者達を熱狂させ、一世を風靡したあの伴内を思い起こし、
 ヒーロー待望論の叫ばれている今、この映画でヒーロー復活を果たしたい。
 さいわい今回、小林旭という得難い役者に恵まれた事で張り切っている。
 スターらしいスターがいなくなった今、彼は最後のスターとも言える。
 伴内のような荒唐無稽な役をテレなく、そして見事に演じられる役者は
 彼をおいていない。

 

 


  ★初代が二代目を激励★

  撮影たけなわの「多羅尾伴内」のセットを“御大”片岡千恵蔵が訪問、
  二代目伴内の小林旭を激励した。
  「面白いものが出来そうですね。小林君の個性がよく出ている。
  二代目として文句なしだよ」と小林伴内にタイコ判を押した。
  御大の言葉に恐縮しながら旭は「学生時代に御大のシリーズはよく見
  ましたよ。夢があって強烈に印象に残っています。
  一歩でも近づけるように努力します」と、かたい握手を交わした。

                    *当時の「東映新聞」より