多羅尾伴内 鬼面村の惨劇

  《かいせつ》

 七つの顔を持つ名探偵・多羅尾伴内の活躍を、怪奇、スリル、恐怖の娯楽3大要素をちりばめて描く最新ミステリーである。
 ストーリーは、信州の一寒村“鬼面村”で次々と起こる凄惨な連続殺人事件の謎を追って展開。その事件解明のために東京からやってきた伴内の推理と変装による動きをシャープに描く。
 鬼面村を支配する豪農・雨宮家の娘達が、何者かの手によって、次々と無惨に殺された。雨宮家に恨みを持つ者の犯行か、殺人現場あるいは死体の傍には、いつも恐ろしい形相を彫り込んだ“鬼面”がくくりつけられている。しかも
25年前この雨宮家の跡取り娘・紀代が殺され、その死体は村の水車に半裸のままくくりつけられ、人目に晒された。代々呪われた血をひく家なのか。この信州の村にやってきた伴内は、早速、鋭い推理と七つの変装で、事件の謎に挑戦する。顔半分焼けただれた放浪の青年画家、村の女子高校の校長、用務員、住職、県警警部などさまざまな登場人物が、多彩にからみ合い、謎は深まるばかり。そしてラスト、想像を絶する。“怨念”のドラマがいっきに噴出。意外な犯人像をえぐり出して、興趣つきないミステリーのダイゴ味をスクリーンいっぱいにひろげて行く。

 

ひとつ、
他人(ひと)に指さされ 女は水車で怨み死に・・・

ふたつ、
不幸な次女は 嫁入り前に黒い沼

三つ、
見知らぬ男は 遠ざけよ 謎を追うたら首縛めろ

四つ、
夜のうち 裏切り者には重い斧

五つ、
いとしい三女の 生首吊るせ

六つ、
無慈悲なれども 秘密漏らせし婆々殺せ

七つ、
謎が謎呼ぶ殺し場で 伴内、細い糸口つむぎ出す

 

《ものがたり》

 信州赤石山脈の裾野にひろがる野辺地村の豪農・雨宮家では、当主剛造・歌江夫婦の次女・真理子の結婚式を明日に控えていた。長女・千寿も、妹の結婚式に出席するため、20年ぶりで村の実家に帰ってきたが、無惨な事件はその夜から始まってしまった。明日は美しい花嫁になるはずの真理子が胸を竹槍で刺され、戸板に縛りつけられて殺されたのだ。黒沼に不気味に浮かぶその死体の髪の毛に、面半分が真っ赤な絵の具で塗りたくられた不気味な鬼面がくくりつけられていた−−−いったいこれは何のしるしなのか・・・・。

 

◆村の水車は赤い血の怨念で廻り続ける。豪農・雨宮家の跡取り娘・紀代が何者かに殺された。犯人いまだ不明。それから25年後−−−

■第1の殺人
被害者・雨宮真理子(20才) 雨宮家・次女。戸板に縛り付けられ、胸を鋭い竹槍で刺されて死亡、深夜稲妻の鳴り響く中、雨宮家近くの沼で発見。なお、被害者の髪の毛に、雨宮家所蔵の能面がくくりつけられていた。面の半面は、赤い絵の具で塗りつぶされていた。発見者・雨宮千尋

■第2の殺人
被害者・日向徹(27才) 画家。水車小屋で、殺害され、花園高校教師、水沼明美の下宿、床下から、死後20日以上して発見された。発見者・多羅尾伴内。

■第3の殺人
被害者・尾崎銀次郎(32才) 保養所管理人。深夜、光風興行保養所管理人室で、頭をザクロのように割られ、斧でドアに打ち付けられて発見。発見者・多羅尾伴内

■第4の殺人
被害者・雨宮薫(20才) 雨宮家・三女。自宅の土間のハリに、宙づり死体で発見される。雨宮真理子と同じように、死体の髪の毛に般若の面、所蔵の能面がくくりつけられていた。面の半面は、赤い絵の具で塗りつぶされていた。発見者・雨宮千尋

■第5の殺人
被害者・くめ(年齢不明) 旅館女中。温泉旅館の裏手、草むらの中で猟銃により射殺される。発見者・雨宮千尋

■第6の殺人
被害者・水沼明美(32才) 女教師。花園高校、裁縫室で殺害される。金魚鉢に直射日光を当て、自動的に能面を壁から落とす仕掛けを作り、被害者の背中を、能面の先端にある鋭い金具で突き刺し死亡させている。発見者・多羅尾伴内

■第7の殺人
被害者・雨宮令子(15才) 雨宮家・四女。雨宮家当主、雨宮剛造の寝室のついたての影にいた所を、剛造の発砲した猟銃の流れ弾により胸を撃ち抜かれ死亡。発見者・雨宮千尋

 

《キャスト》
多羅尾伴内:小林 旭  雨宮千尋:鈴鹿景子  宇田川警部:財津一郎
北村早苗 北川たか子 長谷川真砂美 遠藤 薫 原田英子 渥美国泰 松橋 登 石橋雅史 内田朝雄
菅 貫太郎

《スタッフ》
原作:比佐芳武・石ノ森章太郎・小池一夫  企画:渡辺亮徳・天尾完次・橋本新一・瀬戸恒雄
脚本:掛礼昌裕  監督:山口和彦

 

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